消えた。彼が消えて今日で一週間たった。
いっぱい泣いた。仕事をしても、どこに行ったのか、一体何があったのか。寒い思いはしていないか。辛い思いをしてはいないか。
でも何故、こんなことをしたのか。
自分が課の長であることは理解しているのに、「逃げる」といって逃げた。
なんで、そこまで追い詰められていたなら教えてくれなかったの。何度も何度も大丈夫なのか。聴いていたのに。言えなかったんだ、私には。
社内では、かわいそうという声とあきれたという声と。私が彼と付き合っていることを知っている人はいないので、誰も私の動揺を知らない。
今日はバレンタインデーで、もともとホテルのクラブフロアを予約していた。
行くのを辞めようかと思った。何度か2人で泊まったこともあるホテルだし。
だけど、来た。
来たほうが何か気持ちも変わるかと思って。
良い方に。
ここ一週間はただただ、泣き暮らしていた。食事も喉も通らず、高齢者に薬として処方する栄養剤を併用して過ごしてきた。だから歩ける。
でも、これからは現実を受け入れなければならないんだよね。
私にはハルさんという大切な宝物がいる。結婚の約束をしリングをもらい、ハルが理解してくれたら、籍を入れようとそういう話をしていた。
ハルの父親にも報告をしあとは双方の親に報告かなというところだったような気がする。
だけど、そんな話をしていた数日前、消えてしまった。泣き崩れる私に、みんなは困惑する。
それはそうだ。付き合ってること知らないから。
一週間たった。帰ってこなかった。そして、会社まで辞めてしまった。私は出席していなかった朝礼で彼の退職が発表されていた。
職場で、一番最後に彼の退職を知る私。
何がなんやらわからなかった。
自宅には戻っていない。職場に近すぎて戻れないのだとも思う。
会社の携帯も自分の携帯も全て持ち去りどこにいったのか。
空は晴れている。一週間経ってわかったことは、私の愛情などはあってもなくても、時間は過ぎていくということ。私より辛さを抱える患者さんがいるということ。
一日一日、起きて、仕事に行く。泣きながらでも仕事をする。帰る。お風呂に入る。ハルと話して寝る。それを繰り返す。今の私はそれを精一杯、淡々と行う。
仕事を辞めようかとも考えた。彼は相談員になりなくて私と一緒にやっていた。だから、彼がいなくなり彼の仕事は私に降ってきた。私が抜ければ相談員は不在になる。
私の能力などたかが知れているから、たいしたことは無いと思うけど、いないよりはマシだと思う。それに地域連携に力をいれていた私まで辞めて、クリニックの評判を落とすことも避けたい。
やっぱり辞められない。
彼が辞めた分、働かなければならない。
彼を心配する私に、ハルの父親は言った。
「彼は逃げられたんだから、今、幸せなはずだ。スッキリするためにもう嫌なことから逃げた。逃げたんだから、楽なんだ。」
彼は今幸せなのかな。
ここ1日、心を休めよう。心の整理をしよう。
まだ、どこかで信じてる自分も認めながら。ただ、私は1人ではない。ハルがいる。
彼のような人間と家族になることは誰も許さないことも実感しなければ。そんなことを考えている。
横浜は、本当に彼のことだけでなく、いろんなことが起こる街だ。
少し、ご飯、食べよう。