ハルさんに向かって「嘘ってさ、私は嫌だ」とそう呟いた。
外は暗く、風も冷たい。もう秋ではなく冬なんだなぁそんなことを感じながら。
「嘘ってさ、たまにドラマなんかで、人がこれはつかなければならない嘘なんだーとか言って泣くよね。俺さー。何も言わないって選択肢ねーのかよって思うんだよねー。」
振り返る分だけ風が当たるので、そのまま後ろを歩くハルさんに問いかける。
「私は、嘘ついてごめんと言われればそれで許すよ。何も言わないで黙られるのもやだよ。」
「そもそも、嘘つく状況に陥っちゃった人って可哀想だよね。」
「なんでよ。正直に言えばいいじゃん。」
「今更感ってあるじゃん。まぁ俺、嘘つくほど困ったことないからつかないけどさ。」
ハルさんの言葉は胸を指す。
嘘つきをなじる私を責めているようだ。
「まぁ本当のこと言う人の方が少ないと思ってたらすこし楽になるんじゃない?」
「そんなのやだ。」
でも、相手に自分を押し付けるのも嫌な感じ。
足元がふらついた。
「そもそも、寝てから考えなよ。早死にされても困るしさ。」
ハルさんが笑って私の前に飛び出した。
寒い。鼻の頭が熱くなった。冬がやってきた。