山崎の「これからもよろしく」という言葉の意味はわからなかったが、結果、2人でみんなが大騒ぎしながら飲んでいる状態を眺めることになった。
そろそろお開きになるであろう時間に、
「先生〜!一緒に二次会行きましょうよ〜」先生とは私のことか?
「明日、朝早いんだよね・・・ありがとう。でも、ごめんね。」
「え〜〜〜!!!困ります〜」もう酔っ払いはこれだから嫌だ・・・・
「山崎先生が、先生が来ないなら僕行かないって言ってきかないんですよ!」
私は、山崎がどこにいるのかを探した。私の10m先をのんきに歩いている。小走りで山崎に近寄った私は
「なんで私が行かないとならないんですか!」
山崎はしれっと
「僕も実際、行きたくないんだよ。でも、断るの苦手でさ。それに引き換え、キミ、はっきりした物言いするし、行きたくない誘いはいけないって断れるでしょ。だから、よろしく。」
そう言って笑顔を向けた。
この会は、私でもわかる著名な山崎を囲んで懇親をしたい、あわよくば山崎に近づいておきたいと思う人たちの会だ。そして私はその輪の外にいる。
・・・・・。
腹はたったが、とにかく、二次会に向かおうとしているこの群れから私が逃げてしまえばいいのだろう。
なんとなくみんなからの距離をとり、大通りから小道に入ろうとしたその時、男性らしき、影が私の横を通り過ぎたかと思うと私の肩のラインに入ってきた。
「あなたねぇ・・・・」
さすがにここまでくると、彼を敬うなんて気持ちは微塵も心になく、むしろ私の行く手を阻むモンスターだ。
ニコッと微笑むその影は山崎だった。
「いや、君がいない二次会行かないって言ってしまったから・・・」と山崎の言葉はすぐに遮られた。
「山崎先生〜!いたいた!逃がしませんよ・・・・」1人生徒らしき男性が私たちをとらえた。小道に入って逃亡しようとしたもののそれはすぐに失敗に終わった。
逃がしたくないのは山崎だけなのに、山崎から逃れられていない私はこの状況に非常に満足できていなかった。