40歳からのブログ MSWの日常

ソーシャルワーカー備忘録。雑記。旅行記。軽く福祉。

生活保護を受けていた彼の子供と接して感じたこと 教育格差はなくならないのかもしれない

最近、大きな生活保護受給者に関するニュースが減っているので、良いことだと個人的には思っています。ニュースになるということは生活保護について何かしら論議がなされているという気がして、ニュースになっていないということは平和だなって思ったりするのです。

生活保護については以前こうした内容で話をしました

www.makuharu.com

がんにかかった人が生活保護を受けられなくて死んでしまったという時間について自分がどう思ったかという話です(ざっくり)。私が生活保護について結構敏感なのは多少なりとも事情かありました。

私が都合2回生活保護受給者とお付き合いしたことがあったけど2回とも後から知りました

これは私が社会福祉という言葉を知る前の話です。

離婚して心が荒れまくってるときに、熱心に話を聞いてくれるシングルファザーがいました。大学卒業してすぐ専業主婦になり世間を知らなかった当時の私からみると、とても優しい人に思えました。

悲しい辛いを聞いてもらえればそれでよかったという面もありますが、その人もハルさんと年齢が同じくらいの女の子がいて子どもの話で盛り上がった時期もありました。

そのうち、お付き合いをしないかという話になりました。その間いろいろとありましたが私は再婚するつもりがなかったので、そうしたことや相手の価値観や話し合いました。そして実際にお付き合いをしてみることになったのです。

彼の娘と私

しかし、実際のところ相手の家に行くまで私は現実に気付くことはできませんでした。

彼から娘のランドセルを買うことができないという話を聞きました。

仕事はどうしているのかというと、もともと長距離トラックの運転手をしているのだけど病気でなかなか仕事ができないと言います。病気は何かと聞いたら、「胃がん」だと言うのです。今思ってもそれに嘘はないと思います。ただ、それにしてもなんとなく、おかしいなと思ったことは何度かありました。

彼が娘にもあって欲しいと言うのですが、私は再婚するわけでもないのに彼の子供と会うということに違和感がありました。

しかし、どうも娘は小学6年生であるのに掛け算もできない。家庭教師をお願いするお金がないので勉強を教えてほしいというのです。彼に「自分ですればいいのではないか」と言ってみたら、彼自身、中卒というコンプレックスを持っていて勉強がとても嫌いだというのです。

仕方なく、彼の家に行き娘さんに勉強を教えることにしました。

本当に驚いた娘の様子

ところが、あったその子は私ですら悲しくなるくらいボサボサな髪で、私に挨拶をすることもできませんでした。基本的な躾ができていないのです。ご飯を食べるか聞いたら、頷きます。急いで食材をコンビニに買いに行ってチャーハンを作りました。

すると「いただきます」も言わず、コーラと一緒にガツガツご飯を口の中にかきこみます。家の中を見渡すと、カビ臭くてトレイには新聞紙が積み上げられています。

勉強より、その身なりが気になって先にお風呂に入って一息つこうかと彼女に言いました。

しかし、彼女が首を縦にふるのでなぜかとお風呂場を覗くと中は赤カビでもはや、お風呂はもともとピンクのお風呂なのかと思うほど。そしてかなり異臭を放っています。

勉強より何よりもお風呂掃除だと思った私はその日はお風呂掃除をすることにしました。

そしてお風呂に入れるようにしました。彼女は髪が長いのでブラシかクシを・・・探してもありません。彼は抗がん剤の影響で髪がありませんでした。なので、ブラシはいらないとのこと。でも、娘は髪がな長いからブラシが必要です。私は自分のブラシを彼女に渡し、毎日お風呂に入り髪をとかすように言いました。

その後、彼に一体どういう教育をしているのかと問いただしたところ、離婚したのは最近で、妻が男を作って逃げ出したから、どう娘に接すればいいのかわからないというのです。

もう言い訳はどうでもよく、とにかく環境整備をしなければならないと思いました。何より、荒れた家を片付けなければ話になりません。でも、なかなか片付かず途中でそれは諦め、勉強そのものは近くのファミレスで行いました。

そして、彼の娘には私は「近所のおばちゃん」という紹介で彼女の中では家庭教師でもあり、家政婦的なおばちゃんという立ち位置になりました。

彼とのお付き合いは継続しようか考えましたが、娘がこんな状態ではまずは彼女をどうにか一般的な学力に戻すことが第一であると彼に伝えました。彼は彼で自暴自棄な考えを持っている様子で生活習慣を改めようとはしません。

私を励ましていた彼はもうそこにありませんでした。今思えば、彼は私を励ますことで自分を励ましていたのかもしれません。

私は彼女の成績を年相応に戻すことに必死になり、彼のことは二の次になりました。そのうち、彼がまた「娘のランドセルが買えない。どうしたらいいんだろう。」と相談してきました。なぜ、買えないのか。

彼は生活保護受給者であり、彼女のランドセル費用は実際捻出できたのに、パチンコなどのギャンブルで使い切ってしまっていたのです。それに気づくのは数ヶ月先でした。

彼が生活保護を受けていたと知った日は

ある日、市役所から連絡がありました。

職員:「あなた、彼の内縁の妻と聞きましたが今後彼の面倒をみるということありませんか?」

私:「なんの話ですか?」

職員:「彼が入院したのですが、数日個室を使い、できればその個室代を支払っていただけるのか・・・・」

私:「知りません」

私の電話番号は彼から聞いたと職員は言っていましたが、そもそも私は彼が生活保護を受けていることをその電話で知りました。

結局それが原因で、大げんかをしました。

お付き合いはそこで終わってしまいましたが、娘とは会えないまま付き合いを終わらせてしまいました。今でもその娘が気になって仕方ありません。

別れた後、数回電話がありました。

彼:「就職活動をしたい。履歴書を買うお金がないから、1,000円貸してくれないか。」

気軽に会える場所にお互い住んでいなかったので、彼の口座に振り込みをしました。今思うとそれも嘘だったのかもしれません。

その後、また彼から電話がありました。泣きながら財布を落として生活保護費を無くしてしまったというのです。それを役所の人に話しても信じてもらえない。どうしたらいいのかと大騒ぎです。

私も泣きながら缶詰やラーメンやら食べ物、そして中学生用の参考書をダンボールに詰めました。もう二度と連絡はいれないでほしいこと、もう彼への気持ちはなく他に好きな人ができたこと、それを手紙にかき彼の家に一緒に送りました。

それ以降、彼からの連絡はなくなりました。その後、人づてに、娘が母親に引き取られた話を耳にしました。

教育格差はなくならないだろうな・・・

その後の彼と彼の娘については知る由はないのですが、生活保護受給している人に子供がいた場合その教育に対する支援はしっかりとできているものなのでしょうか。

少なくとも彼の娘は彼の生活に合わせてしっかりとした教育を受けているとは思えませんでした。彼が2人ぶんの保護費を使い果たしてしまったからです。

私は今でも、生活保護という言葉を聞くと彼の娘を思い出します。私は彼女に何もしてあげることができませんでしたし、できれば、生活保護のケースワーカーがちゃんと彼女も支援対象としてくれたことを願います。

ハルさんより2つ年上の女の子。

世間では、貧しくても親子の頑張り次第という意見もあるかもしれませんが、こうした状態でなんの支援もなくその子の成績が平均を維持できるとは思えません。

私は教育格差は永遠になくらないと思ってるのは、そうした子と接した経験があるからです。なくなるといいなって思っています。

最近はいくつかのNPO法人が無料で塾を開いていたりしますが、教育はその子が小さい頃からちゃんとした生活やマナーと共に築いていくものだと思います。

塾だけでもありがたい話ですが、そこだけ切り取った支援だけでなく、その子たちの幼年期も支えることができる支援はないものかと今でも思ったりします。

彼女のような子にそこまで支援していかなければ、教育格差はなくらないのではないかと思うし、かといってそこまでできるのかと考えると厳しいだろうなぁと個人的には思ってます。

注意:登場人物はフィクションです。